韓国書籍紹介など

読書ノートなど。翻訳もこつこつ出版していきたい。

大学内にテント生活する学生

韓国の聖公会大学(ソウル)の学生たちが野宿サークルをつくって大学内に住むという生活=運動をしている。おもしろい試みだ。さらに大学内のテントに住み始めてから一年半を超えるというメンバーもいて、とても興味深い集団である。そのグループ名は「夢見るスリッパ」(カフェページhttp://club.cyworld.com/dsleeper)といい、略称と思われる『夢スリ』というフリーペーパーを発行し、みずからの生活=運動の紹介や主張をしている。A4用紙を4枚重ねて二つ折りにし、中央をホッチキスで止めた表紙込みで16頁の小冊子である。この10月号に掲載されている生活=運動報告の部分を訳載する。





「私たちはこうやって暮らしています」



テント生活



おだやかな午後、テントの前にある椅子に座って落書きもして、本もちょっと読んで時間を送っていたら、はじめて会う方がテントの前でそわそわとしている。テントの後ろの壁面に貼り付けた文を読んだり、本当にテントに人がいるのかと気になるのか体を屈めながらあちこち眺めている。テントの内部が気になるのか様々な角度に体をかがめている方に、用心しつつ近寄りながら声をかけてみた。



こうやってテントに関心をもって近寄ってくる方たちと対話をするときは本当に震える。言葉で紹介するのは修正しづらく、相手が再び訪ねてこなければ、つけたしたり再説明することができないからだ。そしてその対話でテントのイメージが作られてしまうため、かなり用心深くなる。



「なぜテントを立てて生活するんですか?」



関心を持つ人に会うとき、いつもこんなテーマで対話がはじまる。まずテント生活をする私について顧みてみたい。親から経済的な支援を受けないとき、一番最初の心配事は学費だろう。学費を準備するために平日にアルバイトをする場合、成績の管理がかなり難しくなる。



睡眠をちゃんと取れない生活だから勉強もバイトもふたつともちゃんとできない。あるいは学費ローンを受けなければならないけどローンが積もっていくのを見たらめちゃくちゃ負担を感じ、わたしがこれをいつ返していくのかと考えて、不安が果てない。だからといって週末だけバイトをすれば学費はさておき生活費だけでかつかつだ。通学しながら一日2食ぜんぶラーメンで補っていたとき、一月14万ウォン程度がかかり、小遣いと交際費などを足せば4〜6万ウォンが追加される。



自立をするということは経済的、精神的なことを親に頼らないことだ。しかし経済的や精神的に親に頼って生きるとき、生において選択権の大部分を親に左右されるということだ。もちろん親が助言してくれたり決めてくれた通りに生きることは生の助けにはなるだろうが、結局自分が行きたい方向へ行けなければ大変だし辛いだろう。自分の人生を自ら選択できないというのはどれだけ悲しいことなのか。(幼いときから自立心を育てなければならないとあれこれ教育させながら、こんなとき必ず自立心を発揮できなくなる人たちもいるけど…)



しかしいま私たちの現実をみれば自立できる状況では全く無い。劣悪なアルバイト条件、そしてアルバイト生活にくたびれやつれゆく体、あるいはようやくようやく集めたお金はぜんぶ学費へ、奨学生になれば学費負担が減るからとがんばって勉強しようとするけれど、生活費ぐらいは稼がないととアルバイトをし、勉強する時間は減っていくし、それにどうせ奨学生システムはちゃんとなっていないんだし。とにかくバタバタとしているのだが、目の前のご飯代もなくてちゃんと食べれなくて枯れていく体、学生アパートにでも暮らそうかとしても保証金をみてガクガク震える現実。こんな姿が私と私の周辺の友達たちの現実だ。



テントはこんな現実から抜け出た空間だ。
テントを立てる理由は、自分の空間を持とうとするなら道端でテントを立てるしかない現実を見せ、同時にそのなかで自分の生を持続させる方法に対し悩むためだ。自分がおかれた状況で、自分の悩みを自分の方法で表現する道具中の一つがテントなのだ。